シミュレーションの演習

GS10:自動変速機の油圧回路

自動変速機

左図は自動変速機の模式図です。自動変速機は遊星歯車から構成される変速機構、油圧制御機構などから構成されています。切替バルブが作動するとクラッチ装置内のピストンに油圧が作動します。クラッチは2軸間の回転動力を伝達する機械要素であり、2本の軸の回転速度を制御するものです。バルブとクラッチは管路で結合されています。ボンドグラフを左下図に示します。このシミュレーションは20-Simで行ないます。BGSPでも可能ですが、コード作成はやや面倒です。

ボンドグラフ

油圧源SE10に接続されるR12は流路抵抗であり、C13は管路容積、C13のゼロジャンクションに接続されるR15はリークを表します。TFはピストンの面積比であり、油圧を力に変換することを表します。I24はピストンの慣性、C23は非線形ばねです。"1"ジャンクションに接続されるR22はピストンに作用する摩擦です。ピストン速度を"1"ジャンクションからアクティブボンドとして、引出し、積分器によりピストンI24のディスプレースメントを検出します。非線形ばねC231のエフォートに関数231が入るようにしています。 ピストンに油圧が作用する場合、ピストンに加わる力は一定で、ばね力はピストン位置に関わらず終端までほぼ一定とします。切替バルブの作動タイミングはt=0.1[s]とします。非線形ばねの特性はFUNC231により決まるものとします。油圧力はほぼ一定ですので、ピストンはほぼ定加速度で移動します。Low位置(噛み合い位置)に到達すると、REL要素によりピストンの要素Iのフロー(移動速度)をほぼ0にするため、High値によりフローを除します(ピストン質量の増大化)。REL要素は切替の判断要素です。ばね力は急速に増大し、ピストンは停止します。

このボンドグラフはばね特性、油圧回路等の経験値からクラッチの作動を模擬するものです。内部構造の解析から出発しているものではありません。

20-Simによるボンドグラフ・シミュレーション

ボンドグラフ

20-Simによるボンドグラフを上図に示します。切替機構は要素"I241"のコードに含まれます。Tableは非線形ばねの特性です。

シミュレーションの結果

シミュレーションの結果を下に示します。ます。上段からP10(入口圧)、F24(ピスト移動速度)、P24(ばね力)、X245(ピストン移動距離)となります。ピストン速度がランプ状に上昇しているのは、ピストン入口圧(P10)とばね力(P24)の差が一定であるためです。移動距離は噛み合い位置に到達するまで二乗カーブで増加します。なお、この図は20-Simの結果チャートをCSV値で読み出し、BGSPグラフ化によりグラフとしています。EXCEL2010を用いていますので、グラフ加工の自由度が高くなります。