シミュレーション・プログラム

シミュレーション・プログラムについては[1]8.1項でも簡単な解説があります。しかし、初版以来14年を経過し、事情がかなり変ってきています。ボンドグラフによるシミュレーション・プログラムは世界中にかなりの種類がありますが、ここでそのすべての紹介をすることはできません。[1]でもっぱら用いられたTUTSIMは改良され、現在では20-Simになっています。ここでは3種類に限定して簡単な紹介をします。

  1. BGSP
    BGSPは1983年に幸田武久氏(現京都大学)を中心に開発され、その後日本油空圧学会において改良が加えられたボンドグラフ・シミュレーションプログラムです。特徴は次のとおりです。なお、本サイトではもっぱらBGSPを使用します。
    • 非線形特性を持つ要素を含むシステムが簡単に取り扱える。
    • フィードバック特性をもつ要素の特性を使用者が自由に定義できる。
    • システム動特性のほかに使用者が定義するエネルギー効率などの特性値が計算できる。
    • ボンド番号、要素の名称を使用者が自由に与えられる。
    • 公開されたソフトウエアであり、原則無償である。ただし、技術サポートはない。
    • FORTRAN77を使用していて、移植性が高い。コンパイラーが対応できれば、ウインドウズXP(SP3)、Vista、Win7、WinX、Win10などに使用できる。
    • ボンド総数は最大200個まで許され、複雑なシステムにも十分対応できる。
    • なお、ここでのBGSPについてはWin10でも確認しています。(FortranコンパイラーはOpenWatcom)
    難点を挙げれば、
    • 1992年に開発が完了して以来、改良がなく、マルチポート素子などには対応できていない。
    • ボンドグラフの視覚化(GUI)の対応がなく、別途に使用者が書かなくてはならない。
    • 入力データのカラム指定が厳格であり、わずかなミスでエラーになる。
    • 出力はテキストデータなので、グラフ化には別途EXCELなどによる別作業が必要になる。
    • エラーメッセージの解説がほとんどなく、エラー原因の解析が難しい。
    • 因果関係は積分性に限られる。
    • 代数ループ自動回避の機能はないので、個別に考察しなくてはならない。
    BGSPのダウンロードとシステム構築についてはBGSPのインストールマニュアルをご覧ください。
  2. 20-Sim
    20-Simは前身のTUTSIMに全面的な改良を施して新たに開発されたソフトウエアです。特徴はつぎのとおりです。
    • オブジェクト指向的であり、完成したコンポーネントのボンドグラフをオブジェクトとして扱える。このため、開発を段階的に行える。
    • ボンドグラフの構成の入力は画面から容易にできる。かつ、特性式も形式としてはほぼ自動的に与えられる。使用者はデータ点検をすればよい。
    • 使用できる要素のメニューが非常に豊富である。マルチポート素子にも対応している。
    • 入力形式はボンドグラフ、ブロックダイアグラム、アイコニックダイアグラムなど多様な形式に対応している。使用者特有の形式にも対応できる。
    • シミュレーション結果は簡単な操作で直ちに見ることができる。かつ、精密なグラフ化のためのデータ出力機能もある。
    • エラー点検機能もかなりよい。
    • 代数ループの点検及び回避機能がある。
    • 微分的因果関係も対応できる。
    • 必要な部分をサブモデルとして扱うことができるのでシステムの認識が容易になる。
    • 豊富なライブラリとツールボックスがあり、機能の拡張が容易である。
    • 数値計算法はさまざまの選択ができる。
    • 特性式の記述には"SIDOPS+"とよばれる特有の言語を使用するが、ほとんど数式そのままであり、習得は容易である。別装備のコンパイラーは不要である。
    • "Getting Started"のような入門マニュアルが充実している。
    • 2015年10月にpersonal useに限り、100ユーロ、邦貨約13000円と大幅に値下げされ、入手が容易になった。(H27.10.1追記)
    • マニュアルはVer4.5では約1200ページに上り、充実している。
    • 入門用としてはViewerを無償で使用できる。ただし、機能制限がある。また、使用期間制限があったが、現在は解除されている(2010.5現在)。
    難点はつぎのとおりです。
    • 国内代理店がない。技術サポートは開発メーカーとの直接の通信のみとなる。ただし、定期的な講習会は各国で行われているが頻度は少ない。
    • マニュアルはVer4.5では約1200ページに上る。また、表記はすべて英文であり、Open Modelicaのような多言語表記の機能はないので、なじみにくいかもしれない。
  3. The Ipe extensible drawing editor
    このソフトウエアはボンドグラフとは直接関係がありません。BGSPではボンドグラフを描くことができません。簡単な場合には手書きでもなんとかなりますが、複雑になって書き直しなどが重なると手に負えなくなります。このソフトウエアはLaTeXが入るドローソフトです。精密な作図が可能であり、100要素でもA4の1ページに描くことができます。本サイトでは、ボンドグラフ作成にこのソフトを使用しましたので、一応ご紹介しておきます。難点は使用法が簡単とはいえないことです(Ver7については、こちら)。かなり特異なソフトで習得は難儀です。とは言え、LaTeXが使えるのは他に類がなく、自動制御技術者には大変便利です。Ver6ではLaTeXといっても数式が入る程度でしたが、Ver7に至りLaTexで書いた広範なコードが扱える驚きのソフトになっています。Ver6についてのインストール・マニュアルのサイトは閉鎖されましたので、Ver7のインストール方法について、本サイトの Tipsで簡単に記しておきます。
    Ipeの使用上の難点は日本語マニュアルがなく、日本語入力もできないことでしたが、このサイトで抄訳ですが、日本語入力ができるIpe7マニュアルを掲載しましたので、ご覧下さい。