シミュレーションの演習

GS4:クラッチ

機械系モデル

クラッチは2軸間の回転動力を伝達する機械要素であり、2本の軸の回転速度を制御するものです。軸間の回転速度の差を滑りといい、トルク損失は少なく、パワーが伝達されます。クラッチを表す基本的なボンドグラフを左に示します。ここで、x=0はクラッチが切れた状態であり、ボンド12のフローがボンド24に流れることになります。xが大きくなるとボンド12のフローがボンド23に流れ、結合されたクラッチを表します。
"0"ジャンクションにより結合されていますから、エフォートであるトルクの損失はなく、フローはR素子へのフローにより出力のフロー角速度が制御されます。ただし、"0"ジャンクションに接続されたR素子は数値計算上からむやみに大きくはできません。従って完全に結合しても、素子Rに流れるフローはわずかにあり、滑りは必ず存在します。

左図は慣性I33を持ち、トルク源SE21で駆動されるクラッチ付き装置の例です。抵抗R241のエフォート(トルク)に信号 242が掛け合わされフローである回転速度が制御されます。ここで信号242は関数発生ブロックと時間ブロックによりクラッチの結合状況を模擬しています。このシミュレーションはクラッチの動作をシミュレートしていますが、クラッチの内部構造を反映しているものではありません。特性の模擬をしているだけですので物理的構造の解析はしていません。ボンドグラフはこのように内部構造を解析しないで実験データを模擬する場合にも役立ちます。内部構造を反映するためには要素の解析を含む、かなりの作業が必要になります。

シミュレーション結果

下図にシミュレーション結果を示します。クラッチは最初開放されていますが、2~3秒にかけ噛合が始まります。6秒後には急速に開放されるようにプログラムしています。軸23は最初に速度が上がり始め、軸33の速度が上がり、結合時には軸23の速度は下がります。その後は両軸の速度は並行して上昇します。クラッチを開放すると軸23の速度は急激に上昇しますが、軸33にはパワーは供給されませんから、摩擦により徐々に速度は減少します。
図の結果は[1]と完全に一致しています。。

20-Simによるボンドグラフ・シミュレーション

クラッチのボンドグラフを20-Simで表現すると下図のようになります。20-Simではボンド番号を要素名に付与しています。

クラッチのボンドグラフ:20-Sim

20-Simによるシミュレーション結果を下図に示します。BGSPと同一の結果が見て取れます。

クラッチのシミュレーション:20-Sim